about

蒔絵と出会ったのは大学3年の時。
都内で蒔絵の実演が目に飛び込んできました。
見る間に仕上がる蒔絵師の筆さばきに
足を止めて数時間見入ってしまいました。

描き出された花鳥の躍動感
金銀、螺鈿の煌めき
艶やかでしっとりとした漆のあたたかみ

幼い頃から、
絵を描くこと・ものを作ることが好きだった私は
蒔絵の魅力にすっかり惹き込まれ
輪島で学び始めました。

自分自身が体験したように
自分の作品もまた誰かの心に
必要としてもらえるような
存在でありたいと思います。

色彩あふれる蒔絵を

蒔絵の材料と技法はとても幅広く、その奥深い世界に魅了されています。

金属粉・色漆・螺鈿・卵殻といった伝統的な材料から、新しい現代の漆や素材まで様々にあり、どの部分に何の材料を用いるのかで、全く違ったものに仕上がります。音楽に例えると、たくさんの異なる楽器の集合であるオーケストラの演奏が、指揮者によって強調する旋律や緩急などの違いで、同じ曲でも全く変わるのと似ています。

私の父は作曲家で母はピアノを今も教えていますが、育った近くには森や湖もある豊かな自然に囲まれた環境でした。小さい頃から音楽が身近にあり、惹きつけられる響きやリズムに、目には見えないけれども不思議な高揚感を得るとき、色彩をともなったイメージが湧きます。それは、幼い頃に見た景色や草木、体験したことと無意識に結びついて、制作の原点になっているのだと思います。

心地よく美しいと思う色、形、バランスのイメージを表現するために、古典技法に基づいてできるだけ様々な材料を使いこなしつつ、新しい技法を研究しています。

輪島だからこそ学ぶことができたこと

私が蒔絵を学んだ輪島は、室町時代から輪島塗が存在したとされ、江戸時代には多くの塗師屋が全国に行商へ赴き、栄えた漆の里です。
後継者の不足は年々深刻になっていますが、作家として、あるいは職人として、漆に携わる沢山の作り手の方々の存在があって、今も漆の産地であり続けています。

私はここで、蒔絵の筆運びから、肉合研出蒔絵や印籠などの古典技法、乾漆、金継ぎまで、様々な漆芸の知識と経験を、輪島漆芸技術研修所や、弟子入りした親方をはじめ、沢山の方々に教わることができました。
作品制作を通じて、輪島で修行をして受け継いだ技術を次の世代へ繋いでいく一人になれたらと願っています。

工芸としての蒔絵の魅力を伝えたい

茶道具や、印籠、煙草入れ、かんざしなどは蒔絵コレクターが国内外にいるほど、素晴らしい名品が沢山残っています。これらは実用品として使うことができる器物でありながら、途方もない技術が詰まった、それでいて遊び心に溢れた蒔絵が施されていました。

当時の人々はそれを所有することを自慢に楽しんでいたように、今の人にとって楽しめる蒔絵とは何かを考え、作品づくりに臨みます。

Profile

1983年東京都立川市で生まれる
2006年明治学院大学 法学部政治学科卒業
石川県立輪島漆芸技術研修所 入所
2008年同所 特別専修課程蒔絵修了
2011年同所 普通研修課程蒔絵科 卒業 所長表彰受賞
中島甚松屋蒔絵店 中島和彦氏に弟子入り
2012年兼六園大茶会工芸公募展 入選
2013年総持寺祖院修復事業に参加 大祖堂内の格天井を修復
2015年年季明け(号/輝野蘭)
兼六園大茶会工芸公募展 奨励賞受賞
2016年(公財)石川県デザインセンター選定商品に選出
兼六園大茶会工芸公募展 入選
北陸経済研究7月号表紙に掲載
Wajima Sake Cup projectに参加(銀座ソニービル)
2017年国際漆展 入選
彦十蒔絵若宮隆志展~Featuring 小松美羽~
蒔絵パネル制作(銀座三越)
2018年漆芸作家グループ「漆ツ星」を創設、初展示
「ななつのうつわ」展(金沢・クラフト広坂)
2020年「金沢・加賀・能登展」出展(阪急うめだ本店)
彦十蒔絵「あそび心の蒔絵展」出展(伊勢丹新宿店本店)
「小村雪岱スタイル−江戸の粋から東京モダンへ」(三井記念美術館)
彦十蒔絵出品作品の蒔絵制作
国際漆展 入選