金銀、色漆、螺鈿、卵殻−−−−
蒔絵の材料は色や質感にあふれています。
材料を自在に使いこなしつつ
新しい素材や技法を研究し
蒔絵にしか出せない表現を模索します。
鮮やかな色を出す
漆の特性として、乾くと色がややくすむため、なるべく色鮮やかに仕上げるために、市販品ではなく、必要な色を自分で調合し、乾かす時に与える湿度や時間を調整します。
漆黑に白で陰影をつける
漆は茶褐色のため、白色の顔料を加えても淡いベージュ色になります。
そのため、真っ白を表現したい場合は卵の殻を用います。
細かく割り砕き、漆を塗った部分に竹棒で1つずつ貼っていきます。
螺鈿を瑞々しく仕上げる
螺鈿を美しい色に仕上げるためには、なるべく研いだり磨いたりしないで、螺鈿の厚みを保つことです。
空気が入らないようしっかりと漆で接着したあと、漆の塗りこみ方や、研ぎ方を工夫して、色良く仕上げます。
平文でアクセントをつける
金粉より強い光を用いたいときに、効果的な技法です。
板状に加工した金を漆で接着します。
乾漆粉の風合いを活かす
乾漆粉は、ザラっとした素材感が特徴です。
乾漆粉は、ガラス板に色漆を塗って乾燥させたあと、粉状にした材料です。金粉と同様に、筒で蒔くことができます。
新しい素材・パール漆の活用
チタンコート雲母顔料を用いた新しい漆で、明るいパール調の鮮やかな色味が特⻑です。
刷毛で塗った跡(刷毛目)が目立ち易い漆のため、塗り方を工夫して均一に塗ります。
道具を整えること
蒔絵は材料の種類が多いので、それにともなって色々な道具があります。
既製品でも売っていますが、より緻密な作業をするときは、自分の手に馴染み、作業する部分にぴったりと合う道具を作らなければ、うまくいかない時があります。
例えば金粉を蒔く時に使う「粉筒」。先端に布を貼った芦の筒で、中に金粉を入れ、筒を指で叩き、金粉を振るい落として蒔くことで、均一に蒔くことができる道具です。
川辺に生える芦を切ってきて、好きな太さの部分を選んで綺麗にカットし、日頃から集めた色々な布の端切れを選んで先端に貼り、手作りします。
基本的に、金粉の種類や粒子の荒さによって、先端に貼る布の荒さを変えますが、同じ8号という荒さの金粉でも、たくさん蒔きたいときは荒いメッシュの布を、薄く均一に蒔きたいときはもう少し細かいメッシュの布を使うと、蒔く量をコントロールしやすくなります。
様々な素材を使いこなして思い通りに作業するために、必要な道具をまず整えることを心がけています。